2024年8月。夏期講習が始まり二週間ほど経った。
7月下旬から6年生は「自分との挑戦」が始まる。それが夏期講習。例えば「目的意識をもって問題にあたる」「不明瞭だった解き方や知識をクリアにする」「「計算の精度を出来るだけ上げていく」「国語の文章読解にどっぷりとつかる」…。数え上げればきりがない。そういったことを完璧じゃないにしろ挑戦していく。その経験こそが来年の今頃、受験を経て入った学校で役に立つ…いや、支えていくはずなんだ。だから教える側も妥協もしない。
また、ザッツでは毎日「振り返りの時間」を設けてその日やったことをその日のうちに塾内で復習させている。それが一番効率的だと考えているから。
激しい夕立の真っ黒な雨雲が西の空へ去った頃、今日もいつもの面々が授業後の振り返りにいそしんでいる。テキストの問題が基礎基本から少しずつ離れてくる今、全てのものが「習ったからすぐに解けるか」というとNO。何回でも解き直さないといけない問題はどの科目にも現れる。だから教えた人間がいる空間で振り返りをさせたいと思っている。まぁ…生徒が質問するか否かは別として。
そう思っていると算数のテキストを抱えてオウガがやってきた。彼はたまにやってきては「みっしぇる、ここ教えてくださーい!」と分からないことに全く負い目もない様子だ。でもそれがいい。まさに「ブリオーソ」、元気よく、だ。
いつものように質問の内容に答える。そして類題を出してみる。
「じゃぁこれ解いてみ?」
でもその日はそこからが違った。いつもなら「…ごめん、みっしぇるもう一回教えて!」と快活に答えていたのに
「…もう一回こっちの問題解いた方がいい?」
って答えたんだ。
「やっぱりもう一回やってみて解けたら類題もやるね」
オウガが続ける。
いつも元気者のオウガ、先に先に進もうとする歩を、少し考えてから足を出せるようになったのがこの頃なんだ。やみくもに解くんじゃなくて自分が解くべき問題を選定しながら進めるようにいつの間にかなっていたんだ。そして彼はそうやって自分自身の受験もクリアしていくようになるんだけど、それはまだ先の話で。今は彼の、彼ら一人ひとりの成長を感じる夏に少し頬が緩むのが自分でも分かった。