2025年5月。もうすぐ6月になろうとする少し蒸し暑いある日曜日に彼らが教室にやってきた。夏至に向かう午後3時ごろの日差しはとても夕方とは思えない強さ。そんな中それぞれ学校の制服を着て懐かしい顔が揃った。
きっと今年の6年生に自分の制服姿を見せたかったのだろう。または初めて受けた中間テストが終わり急に塾が懐かしくなったのか。でもどちらでもよかった。また彼らに会える。「私立の、中学生になった彼ら」に。中学生になり最初の夏。一年目の夏服たちはまだまだ新しかった。レオンだけブレザー姿だ。彼らしい。
その日は今年の受験学年の日曜授業の日。卒業生たちにはお菓子と飲み物を買いに行かせる。こっちはこっちで授業。戻ってきた卒業生たちはなにやらごにょごにょ、クスクス笑い合っている。きっと近況を言い合っているのかな。そうこうしているうちにナオ先生が来た。日曜日は基本いないはずなのだけど、今日は卒業生たちが来るので声をかけておいた。一気に卒業生たちがナオ先生に群がる。
そして授業の終盤、今年の6年に向けてスピーチタイム。制服を着て「いっちょまえ」に今年の6年の前で【今の自分】を話す。去年の今頃は「座って聞く」側だったのにね…そんなことをぼんやり考えていた。どの子も自分の手を離れ、通っている私立の中学校でうまくやっているのかな。もし上手くいっていなかったら…まぁ今日は来れんわな。そんなことも考えていた。恥ずかしいそうに、またそれでも嬉しそうに卒業生たちが一人ひとり話を終えていった。制服を着るだけでもお兄さん、お姉さんに見えるのに言うことまで少し大人っぽくなって。「最後まであきらめずに」とか「問題と向き合って」とか。
今のこの子たちを見ていると数か月前まで駆け足で入試まで過ごしたことが遠く思える。たくさんこの子たちはこの場所で時間を過ごした。目標を叶えた彼らの今の足取りはどうなんだろう。いまだ早歩きなのか、それともゆったりなのか。
授業は終わったが卒業生たちはなかなか帰らない。「まぁ今日くらいは急ぎ足をやめてアンダンテでいればいい。歩くくらいの早さが丁度いいのかな」と思いながら彼らのわちゃわちゃしたやり取りを遠巻きに見ていた。その時ふとナオ先生とシュンサクの話す声が聞こえてきた。
「やっぱりみっしぇるって怖かった?特に夏前とか。」
学年で一番大人しかった…いや今でもそうかな。そんなシュンサクが答える。
「…いやでも…多分あれ演技っていうか…本心じゃなかったから…。」
なぁんだ。バレてた。彼らを「いっちょまえ」にするため、大人への依存心を小さくするため一所懸命彼らに厳しく対応していたこと、バレてたんだ。なんか恥ずかしいな。みんなそうだったのかな。恐くて確かめられないよ。苦笑いしか出ない。やられた。
中学の中間テストが終わった日曜、古巣の塾。日々のテンポが【アンダンテ】に戻してもらったのは彼らではなくて自分だったのかもな。ちょっとそう思ったんだ。