2025年2月5日、朝。

もうすぐ定刻。この発表で今年の入試の全てが終わる。

この塾がある地域は距離があるため東京受験までいく子はそこまで多くない。塾生たちのほとんどは1月の埼玉受験で終結する。だから2月まで受けたのはこの塾ではマコトだけだ。そのマコトからの結果連絡を今、待っている。

定刻だ。が、電話はならない。きっとその学校のサーバーが込み合い、合格発表サイトになかなかたどり着かないのだろう…そうであってほしいと思いながら2月の空気に冷やされた缶コーヒーを飲んだ。

「え、もうこんなぬるくなったの?」

エアコンをつけたばかりの教室で独り言。もう少し待ってみよう。

思えばマコトの合否連絡は分かりやすかった。合格の時は発表時間から3分も経たないうちに12歳男子の弾んだ声が聞けた。不合格の連絡はだいたいその時間から15分から30分。ひとしきり発散してからかすれた声で、それでも努めて明るい声でかけてきた。「男子でも女子でもやっぱ堪えるよな、✖(バツ)の結果ってさ。心の準備もいるのかもね。みんなそうだったもんな」自分に何かを言い聞かせるようにまた誰もいない教室でぼやく。「でもどんな時もみんなで乗り越えられるようになったよな」。また独り言。「みんなで…ね。」

授業中、難しい問題が出題された時にはいつもみんなに頼られていたマコト。

ムードメーカーで重い雰囲気の時にいつも突破口をひろげてきたオウガ。

唯一の女子でおっとりとした、でもどんな問題にも教えられた通りやってみようとするアキ。

塾では口数少なく大人しいが、おうちでは弁慶さまだったシュンサク。

そして6年の春、最後に入塾してきたレオン。

マコトからの連絡を待っているのに、何故か浮かんでくるのは5人で1組のスナップショット。この5人を受験生にするために、この5人を「いっちょまえ」にするための一年間が頭の中を駆け巡る。もう一度「最初に戻って」と言われたらできるのかな?そんなことを思っていた時、電話が鳴ったんだ。ちらっと見えた携帯の画面は定刻から25分過ぎていたことを映していた。電話に出る前、一つ深呼吸した時にまた5人の姿が頭の中に浮かんだんだ。