「ぜひ僕らの通うS中学校に来てください。」
「部活も楽しいし、先輩たちはイケメンが多いです。」
「僕でも頑張れたので、皆さんも大丈夫だと思います。」
もうすぐゴールデンウィークに入ろうかとする土曜日、あの三人が制服を着て塾にやってきた。学校帰り、中学校ではクラスの違う三人が示し合わせて塾に来た。土曜日は今年も6年生の授業だから三人に学校の紹介がてら話をしてもらった。最後に会って1か月していないのに、制服を着るだけで大人に近づいた気がした。そしていっぱしに次の受験生の前で堂々と話をしている。
彼らが6年生の前で話している傍ら、一年前のことを思い出す。
教えてきたこと、指導してきたことの一つ一つが彼らの一部になっているんだろうな。責任は重大だ。今年の6年生にもその責任があるんだな。
「帰るんか?」
「うん」
「また来る。」
「今度またジュースとお菓子奢ってね。」
「うわっ。まぶしっ。」
いつの間にか傾いていて西日が差し込む。三人の影が長い。そういえば彼らは去年、この茜色の時間に通塾していた。来年の今日もきっときれいな夕日だといいな。今日みたいな。
「また遊びにおいで。」
「うん。またね。ナオ先生にもよろしく。」
「じゃあねー。みっしぇる。」
「またね。バイバイ。」
-うん。じゃあね。またね。