「どうだった?」

「ん?今のところ…個別指導の分も合わせると…3勝1敗。」

「で、あの3人は?」

「2勝…1敗。」

1月10日、夜の8時。ナオ先生との会話。ナオ先生から気になって電話が入る。ナオ先生は栃木受験の時と同様朝から受験校に駆けつけてくれていた。

集団授業生の3人は午前受験・午後受験とも受けているが午後回の発表は明日の朝。当日、夜までの結果判明分で2つの合格と1つの不合格。ということは…。

「…そうかぁ。ひとりダメだったかぁ。悔しい!でも明日の受験も行くんでしょ?」

「うん…。さっき電話で結果連絡貰った時にね…本人とちょこっと話した。最初はサバサバした感じで『悔しいから明日がんばります!』なんて言ってたけど…。最後はちょっと涙声だったな…。」

「で、なんて声かけたの?」

「『〇も×も知って初めて受験生になれるんだ』って。」

その子は生まれて初めての受験で合格をもらっている。栃木受験で。ただ…ということは…今回の不合格も生まれて初めてだったことになる。当然、その悔しさや切なさや虚無感はあるはず。しかも第一志望だ。

「あと、『前に言った通り、落ち込むなら30分で集中して落ち込んでくれ。そして31分目にはできることを少しでもやろう』って…。でもその声掛けでよかったのかなぁ…。迷ってるよ。」

我ながら自分のことのように落ち込む。そんな時、本当にできるだけのことをして彼らに臨ませたのか、自信が揺らぐ。

「それでいいんじゃない?本当のことなんだから。それにさ。あの子たちはもうそんな弱くないよ。今朝だってみんな顔が晴れてたもん。『腹決めた!』っていうかさ。明日また行くって言ってるんでしょ?じゃあ大丈夫だよ。」

すごいな、ナオ先生。言い切るところが。

「栃木受験から冬期まで見てたけどあの子たちずいぶんしっかりしたもんね。なんて言うかね…『根っこがしっかり張ってる』っていうか。うまく言えないけど『勝つために行こう!』って思って受ければ大丈夫なはずだよ。」

そうだった。そういう風に指導してきたんだった。

「大人が根っこをぐらぐらさせてもしょうがないじゃない。また信じて送り出すしかないでしょ。」

…おっしゃる通り。

受験生も大人も「やるだけやったら、やれるだけのことをやる」が鉄則。言葉にしたら変だけど、きっとそういうことなんだ。じゃぁ指導の側の自分がやれるだけのこと?なんだ?

とりあえず明日以降の「不測の事態」があった時のことのプランニングだ。杞憂に終わっても、いや杞憂に終わっていいから「悔いなく」やりつくそう。それだ。

ナオ先生と翌日の段取りを確認し、電話を終える。翌日もナオ先生は来てくれることになった(実は勝手に約束しちゃってた、受験生と)。

「もしもの時」のプランニングの作業が無駄になることを望みながら、真剣に過去問とにらめっこ。切ないけどやろう。

まだまだ本番は始まったばかり。でも全部終わった時にみんなが思えればいいな。「やるだけやった」って。

まだまだ根っこは伸ばせるらしい。