「ナツキは大丈夫…フユトとコハルは…やっぱりやんなきゃダメかな」

預かったはいいものの、彼らの志望校の入試日まで10か月すらなかった。頭を悩ませていたのは彼らの計算能力。小数・分数計算のやり方さえ覚束なかった。個人的な考えでいえば計算「技法」は教えられるけど、その後はデイリーな反復しか方法はない。小学校の授業しか受けていない状況の彼らの学力や経験値も全てバラバラだった。通信でやっている子もいけど、受験算数が求めるレベルまでは到達できていなかった。

だから決めたのは―

「はい、来週から土曜の授業は1コマ分延ばすからね。計算をみっちりやります。ただし任意。やる人は必ずおうちの人にそのことを伝えておいてね」

そう宣言した時の彼らのくもった表情。「やるかやらないか、任意」。これが一番困るよな。うん、知っている。だから知りたかったんだ。来週の終業後に誰が残っているのかを。土曜の夕方、「目標に向けて頑張りたい自分」と「自由にしていたい自分」どちらを取るかな。さあ、迷おう。その日の授業後、梅雨らしい天気のもとでそれと同じような表情で帰って行ったみんな。どっちを選ぶだろう。

翌週土曜。全員その場にいた。外は梅雨空。そこから夏期講習が始まるまでの土曜は、その時間が実質の最終コマになっていったんだ。でも計算特訓という時間の投資は大きなリターンをもたらした。

―梅雨の長雨はうっとうしいかもしれないけど、これがないと米作りがうまく行かないんだよ

今年の夏は暑そうだな。実ってくれるといいな。

計算特訓プリント、今は×ばっかりで「解き直し」の時間の方が多いけど。