「ぼく、受験するの?」

自分ががその親子に入塾説明をしているときに彼はそう言ったんだ。親御さんとお子さんで受験へのテンションが違うことはよくある事だから驚きはしなかった。でもまさか塾の人を前に口に出すかね、怒りでもあきれでもなく、単に「正直なやつだな」って思ったんだ。そしておうちでのやり取りなんかがその一言で全部わかった気がしたんだ。思わず吹き出してしまったのを今でも覚えてる。

「ねぇ、一つ聞いてみてもいい?受験にはあんまり乗り気じゃない?」

その子は言った。

「うーん…してみたいけど…勉強で大変なのはイヤかな…」

正直で面白いやつ。それが彼に対する第一印象であり、そしてそれは間違いではなかったし、彼の最大の武器にもなった。

彼の名前は「フユト」。6年生になる直前の3月にイヤイヤ入塾し、なのにすぐに楽しく、本当に楽しく最後まで塾に通った。そして途中で変えたワンランク上の志望校を取ることになる受験生だ。精一杯自分自身にチャレンジを課し、大きく成長を見せた受験生だ。

ただ。その時はまだまだ多くの課題を残した「普通の小学生」だったんだ。そしてその一言から「フユト」の中学受験が始まったんだ。